エクソソーム/EV放出におけるESCRTについて

MSCエクソソーム

エクストラセルラーベシクル(extracellular vesicles、EV)の放出におけるESCRT(endosomal sorting complexes required for transport)タンパク質について説明します。

エクソソーム/EVの形成と放出は、一部の細胞の内部で発生するエンドソームと呼ばれる構造に依存しています。エンドソーム内部では、ESCRTタンパク質という特定のタンパク質群が作用します。ESCRTは、ベシクル形成、タンパク質の選択性のソート(選別)、そしてベシクルの放出のプロセスを制御するために重要です。したがって、ESCRTタンパク質は細胞間通信の鍵を握っており、細胞の生理的、病理的状態に大きな影響を与えることがあります。

これらのタンパク質は、エクソソーム/EVが適切な成分を含むようにし、エンドソームから細胞外へと正確に送り出すために必要な仕事を果たしています。この過程は一連の分子的なステップで構成され、異なるESCRT複合体(ESCRT-0、I、II、III)がその過程で関与します。

  1. ユビキチン化タンパク質の選択:エンドソームの成熟が進むと、細胞の様々な場所から運ばれてきたユビキチン化タンパク質がエンドソーム膜上に集まります。ユビキチン化とは、タンパク質にユビキチンという小さなタンパク質が結合する生化学的プロセスを指します。ユビキチンは、76アミノ酸からなるタンパク質で、全ての真核細胞に存在します。ユビキチン化の過程は次のように行われます:活性化:ユビキチン活性化酵素(E1)がユビキチンをATPの存在下で活性化します。共役:ユビキチン共役酵素(E2)が活性化したユビキチンを受け取ります。リガーション:ユビキチンリガーゼ(E3)がE2からユビキチンを受け取り、特定のターゲットタンパク質にユビキチンを結合させます。ユブキチン化されたタンパク質は、イントラルーメナルベシクルの形成に重要な役割を果たします。イントラルーメナルベシクル(Intraluminal Vesicles、ILVs)とは、エンドソーム内部に存在する小さな泡状の構造体を指します。直訳すると、「腔内小胞」や「内腔小胞」となりますが、これらは細胞のエンドソームという構造の内部に形成されます。
  2. ESCRT-0の働き:ここで、ESCRT-0複合体が作用します。ESCRT-0はユビキチン化タンパク質を特異的に結合し、エンドソーム膜上で小胞の形成が始まる場所(ドメイン)を決定します。
  3. 膜の曲がりの開始:ESCRT-0の作用により、特定のドメインに集まったユビキチン化タンパク質の存在により、エンドソーム膜は内側に向かって曲がり始めます。これがイントラルーメナルベシクルの形成の初期段階です。
  4. ESCRT-IとESCRT-IIの作用:その後、ESCRT-IとESCRT-II複合体が介入し、膜の曲がりをさらに深め、小胞がエンドソーム腔内に突出する「胞の芽」を形成します。これらの複合体は膜をさらに変形させ、小胞の形成を助けます。
  5. ESCRT-III複合体:最後に、ESCRT-IIIが結合し、完全なベシクルの形成と切り離しを支援します。この複合体は膜を曲げて閉じる作用をし、小胞が完全にエンドソーム腔内に切り離されます。

したがって、ESCRTタンパク質はエンドソームからEVを生成し放出する過程のすべての段階で関与し、細胞内での正確な通信と物質輸送を可能にしています。このようなプロセスは、細胞の生存、成長、分化にとって極めて重要であり、異常が発生すると病状を引き起こす可能性があります。

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